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2014.07.15

shinzou's Roses コラム

shinzou's Roses ジュード・ジ・オブスキュア 2014

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今回ご紹介させて頂くバラは「ジュード・ジ・オブスキュア」である。David Austin曰くこのバラの名前は同名の小説が由来となっているそうだ。英語で書くと「Jude the obscure」。ビートルズの名曲「Hey Jude」からも分かる通り「Jude」は人の名前であり、「obscure」を辞書で調べてみると「ぼんやりした、はっきりとしない、不明瞭な、曖昧な、不透明な、目立たない」と言った意味が並んでいる。「obscure」という名前が付いているからには、目立たないバラを連想されるかもしれないが、その予感は当たっているだろうか?それでは、実際の「ジュード・ジ・オブスキュア」とはどのようなバラなのか見てみることにしよう。

David AustinのHPで「ジュード・ジ・オブスキュア」のページを開くと返り咲き、大輪・ディープカップ、横広がり、小型とされている。一口に返り咲きと言っても、年に10回咲こうが年に2回しか咲かなかろうが、どちらも返り咲きと言える。我が家の「Jude the obscure」の場合は後者が当てはまり、四季咲き性は弱い。具体的に書くと1番花、2番花、そして秋の3番花の3回咲き位のイメージがある。その結果、小型のつるバラ的な樹形を形成しており、2m超のアーチを覆い尽くすだけでは飽き足らず、更にその上を目指す勢いが有る。よって小型と紹介されている事には違和感を覚えるが、栽培環境によってその後の成長が大きく変わるのがバラというものだ。

花の色は肌色がかかった黄色・・・というか、クリーム色だ。その形はDavid AustinのHPで紹介されている通りの大輪・ディープカップ。しかし、これは欠点と言っても良いと思うのだが、カップが深すぎて花がボール状になって開かない事が多い。肝心の一番花が全てボール状になってしまっているのを目の前にして、「これまた微妙なバラを引き当ててしまったものだ・・・。」と感じたのを覚えている。ステム(花茎)は強く上を向いて花を咲かせる。それはそれで良いのだが、アーチの頭上で咲くものだから花をよく観賞できない。上を向いて咲いて欲しい品種はうなだれて咲くし、うなだれて咲いて欲しい品種は上を向いて咲く。それがバラ選びの難しさの1つだ。

ここまで書くと「ジュード・ジ・オブスキュア」は、四季咲き性が弱いが故に枝が暴れ、花は片っ端からボール状になって開かない、まさに「The obscure」なバラとして真っ先にカタログから抹消されていても文句は言えない品種に思えてくる。しかし、この「ジュード・ジ・オブスキュア」にはここにはまだ挙げていない、他のどのバラにも負けない特徴があるのだ。

「イングリッシュローズきっての強香種」

イメージ 先に「ジュード・ジ・オブスキュア」の花はボール状になって開きにくい品種だと述べさせて頂いたが、それではそのボール状になっている花を一輪切り取って部屋に持ち帰り、その花を指でこじ開けてみよう。あなたはその瞬間、なぜ「ジュード・ジ・オブスキュア」が1995年の発売から20年たった今もカタログに残り続けているのか理解できるだろう。
ボクは香水の事とかよく分からないのだが、もしこのバラと全く同じ香りを持つ香水がこの世に存在しているとしたら、その香水は世界中のどの香水よりも素晴らしい香りを持っているに違いない。その香りのタイプは紛れもなくフルーツ香。またその強さも頭抜けており、これはボールの中に香りが閉じ込められていることが大きいと思われる。これこそが「ジュード・ジ・オブスキュア」の、「ジュード・ジ・オブスキュア」たる存在価値だと、ボクは思う。
ところで「ドリアン」という果物はご存じだろうか。多分、名前くらいは聞いた事があると思うが、ドリアンの名産地はマレーシア。強烈な腐臭を漂わせる果物として有名だが、「本当に美味しい当たりドリアン」は腐臭の中に百種類のフルーツを混ぜ合わせたような、えも言われぬ素晴らしい香りをまとっている。モモにはモモの香り、リンゴにはリンゴの香りというものがあるが、ドリアンにはそれら全てのフルーツを混ぜて濃縮したような素晴らしい香りが確実にある。誰かがドリアンを紹介する時、面白がって臭いと言う事だけを強調して書くので、ドリアンが非常に素晴らしいフルーツ香をまとっていると言う事は殆ど知られていないだろう。
そして、このドリアンから時折漂ってくる素晴らしいフルーツ香はどこかで嗅いだような記憶があったのだが、それがこの「ジュード・ジ・オブスキュア」の香りなのだ。香水「エブリン」の原料となった「エブリン」にもこの香りがあるが、「ジュード・ジ・オブスキュア」の方がより強い。まさか「ジュード・ジ・オブスキュア」と「ドリアン」の香りに共通項があるとは誰も思わないだろうが、両者ともに「それを実際に味わった人にしか分からない素晴らしさ」ってものがある。そしてそれを文章にして皆様に正確に伝える事なんて、ボクには出来ない。

場合によっては大きく成長するが、香り好きのイングリッシュローズファンを自認しているのであれば「ジュード・ジ・オブスキュア」は外せない。ボールになっているその花をそっと開いた瞬間、ボクが何を言っているのかきっと理解できるだろう。「ジュード・ジ・オブスキュア」2014年一番花。とにかくボール状になりやすい花だ。これはもしかして、香りを守るためにこのような形で咲いているのかもしれない反対側から見た「ジュード・ジ・オブスキュア」。良く見ると手前のアーチが空いているが、ここは元々アブラハム・ダービーが植えられていた場所だ。アブラハム・ダービーはカミキリムシの幼虫に食い殺されてしまった。ちなみに「Jude the obscure」の名称通り、植えられている場所は半日陰のポイント。この場所が気に入ったのか、元気が良い。

 

イメージ アーチの頂上で上を向いて咲く「ジュード・ジ・オブスキュア」。うなだれて欲しいんだけど、うなだれない。開いて欲しいんだけど、開かない。しかし、それこそがバラというものだ。

思い通りになんて行かないからバラは面白い。それは写真だって同じこと。つくづく、人間の習性はよく出来ていると思う。全てが思い通りになってしまったらすぐに飽きるようになっているし、思い通りに行かないものに関しては思い通りにしようと創意工夫する。そしてたまに上手く行くことがあるから、それが快感でまた頑張れる。これは何もバラや写真に限ったことではないのだが、何かを続けるうえで思い通りに行かないってのは、実はすごく大切なことなんだ

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