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2010.01.11

shinzou's Roses コラム

プリンセス・アレキサンドラ・オブ・ケントの生育不良

人間の都合で品種改良された殆どすべての動植物は、愛らしさや美しさ、そして生産性などが優先されているため、生命力や適応力のある種だけが生き残れる自然界に入ると、残念ながら淘汰されてしまう運命にあると考えている。例えばチワワは世界中に愛好家がおり、その愛好家が居るからこそチワワは生き残り、純血を保つことが出来ている。仮にチワワの愛好家がこの世から一人もいなくなってしまったとしたら、ブリーダーはチワワを生産しなくなり、ものの20年程度で絶滅してしまうであろう。また、金魚の王様と言われるらんちゅうは固定化すらされておらず、日本中の熱心な愛好家が、その存続や文化を守り続けている。

バラにも全く同じことが言える。全ての園芸植物の中でも際立って長期間にわたり人間の手が入ったバラは、類稀なる美しさと馥郁たる香りと引き換えに、病害虫に非常に弱いという欠点を有する。タラの芽を獲りに近隣の山に入ると自然界で生き残っているバラを目にすることができるが、それは庭で栽培しているバラからあまりにもかけ離れている。それは藪の中に自生しており、無数のトゲと伸長力で周辺のツタや枝に絡みつきながら、上に這い上がろうとしていた。春にもかかわらず、花や蕾を全くつけていなかったことから、まずはそこで生き残ることに精一杯なのかもしれない。一歩その中に足を踏み入れようものならば、足や腕に絡みついて全身傷だらけになってしまうほどに近寄り難い存在であった。はっきり言って自然界に生き残っているバラは全くの別物であり、こんなものを庭で育てる気にはなれない。
これを目の前にすると、ボク達が庭で育てているバラが野山で自立して生き残り、子孫を残していけるとはとても思えない。そもそも、ノイバラ台木の助けがなければ生育すらままならないほどに弱い存在。それが人が創り出したバラである。よって、カタログ落ちして生産者がいなくなったバラは、残念ながら近い将来に絶滅する運命にある。ボク達はある品種を思い入れとともにバラの栽培をしているが、それは同時にその種を自分の庭に保存していることでもある。

そんな弱いバラを50株以上も育てていると良好な生育をしているものもあれば、そうでないものが出てくるのは当たり前のことである。良好な株に関しては引き続き素晴らしい花姿や、馥郁たる芳香を楽しめばよい。しかし生育不良の株に関しては扱いに頭を悩ませることになる。
生育不良の原因は多岐にわたるため、その原因を突き止めるのは素人には困難だ。日当たりや風通しが問題なのかもしれないし、土壌が悪いのかもしれない。カミキリムシの幼虫が入っているかもしれないし、コガネムシの幼虫を株元に100匹飼っているかもしれない。また目に見てわかるうどん粉病や黒点病ならば農薬で比較的簡単に対処することが出来るが、癌腫・線虫などであるとすればタチが悪い。ひょっとしたら、もともとの苗が不良苗かもしれないし、根本的に問題を抱えた品種かもしれない。
そんな手探りの状態の中、冬に寒肥を施す作業は原因究明の数少ないチャンスである。寒肥を施すにあたっての利点は、土壌の改善根切り、そして普段は見ることのできない根の異常の発見の3つである。先日、レイアウト替えのコラムでプリンセス・アレキサンドラ・オブ・ケントが生育不良であると書いたが、まさにその原因は根の異常であったのだ。

 

イメージ寒肥を施すべく株元から20cm程度離れたところにスコップを入れても、根がブチブチ切れる感触が全くない。別の場所を掘っても全く同じ症状である。

これは何かおかしいと思い、株を手で軽く引き上げてみると、いとも簡単に「スポッ!」っと抜けてしまったのだ。普通であれば、根が土をしっかりとつかんで離さないのだが、まったく根が生えていなかったのだ。すぐ隣のジュビリー・セレブレーションは多少生育が悪くとも根はびっしりと張っていたのと正反対である。

 

イメージズタボロの状態で販売されていたミスター・リンカーンを完全に復活させた事があるが、それは根が生き残っていたからこそ出来たことである。対して、この苗の根は腐ってカビが生えており、明らかにダメなオーラが漂っている。上記で触れたように美しさを優先したバラは、台木の助けがなければ生育すらままならないのだ。台木がダメならば、上はダメに決まっている。病害虫の防除でも書いているが、ボクがバラを育てる目的は、近隣の方々を驚かせるような圧倒的な開花を得るためである。よって、ダメな苗を頑張って育てても手ばかりかかって成果は少ないので育てる気にはなれない。

 

可哀想であるが、ゴミ箱行きへ・・・・。となるのだが、そこは人情。
イメージ
土を新しくして鉢植えで育てたら、とひょっとしたらミスター・リンカーンのような奇跡的な復活を果たし、あの超美麗花を楽しませてくれるかもしれない。そこで小さなスリット鉢に植え替えてもう一年様子を見ることにした。これで復活してくれればよいのだが、流石にこの状態ではあんまり期待できない感じだ。だけど見捨てずに頑張ってみよう。

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