ピンボケはなくならない

先稿にて「手ブレ」について拙(つたな)い経験からボクなりの見解とその難しさをお伝えさせて頂いたが、それでは「手ブレしていなければ良いのか?」と言うとそうではなくて、「ピンボケ」写真だって真っ先にボツ写真と判定されてしかるべきだ。

この、「ピントを合わせる」という至極当たり前の事も参考書の一番最初に載っているであろう「基本中の基本」事項であるが、「手ブレ」と同じく、写歴10年以上となった今でも自分自身への戒めとしてここに書き記しておかなければならない程、永遠の課題であるのだ。

最も分かりやすいのがポートレート写真で、この場合は被写体の「瞳」にピントが来ている必要があるとボクは思っている。ここで、「口にピントが合っているべきだ!」とか「耳にピントが合っているべきだ!」とか、果ては「胸にピントが合っているべきだ!」と言う人は多分稀であり、それは何か特殊事情があっての話だろう。普通は「瞳にピントが来ているべき」だ。

例えばある女性のポートレート写真を見た時、意識せずともその「瞳」に視線が行くだろう。その時、その「瞳」にピントが合っていなかったとしたら、それを見た人は何だかボケた写真と思うはずだ。男性誌でも女性誌でも良いが、表紙を飾っているポートレート写真がもし瞳にピントが合っていないピンボケ写真だったら、消費者に訴えかけるような眼力が無い表紙となり、売り上げにも影響する。逆に、瞳にピントが完全に来ている写真はそれを見た人を「ハッ!」とさせる力が備わる事があるかもしれない

機種 D4 「AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED」

とあるショッピングモールで撮影した何の変哲もないスナップショットだが、だからと言って瞳にピントが合ってなくてもよいということは全くなく、瞳にピントが合っている必要がある。

とらえた表情は良かったがピントが合っておらず、これはボツ写真。絞りF1.6なので仕方がないと言えばそれまでだが、それを言い訳にしている限り進歩もない。

ついでに言うと、構図も背景も良くない。
レンズ AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED
露出モード 絞り優先オート
絞り F1.6
露光時間 1/200s
ISO感度 ISO800
露出補正 0
測光モード マルチパターン測光
焦点距離 24mm
AFモード AF-C シングルエリアフォーカス
ピクチャーコントロール スタンダード
三脚 手持ち

とにかくボクは「瞳にピントが合っている事の大切さ」を伝えたいのだが、ここで問題なのはボクが常用しているレンズは大口径単焦点がゆえにピントが「ごく薄」だと言う事だ。絞り開放で撮影する事はあまりないが、それでもF2〜F2.8程度までは「ごく薄」であり、例えシャッター速度が1/500sを上回るような手ブレの心配がないシチュエーションでも、結局のところシャッターを切る瞬間は息を止め、細心の注意を払って撮影しなければならない。「何となくシャッターを切ったら偶然にも良いのが撮れてました。」なんて事は、まずありえない

そんな訳でボクは、年がら年中、あの手この手で何とか「瞳」にピントを合わせる努力をしているのだが、なかなかどうして、これもまた難しいのだ


「AF-C シングルエリアフォーカス」

機種 D4 「AiAF Nikkor 85mm f/1.4D IF」

「AF-C シングルエリアフォーカス」

プロの写真家の方々は、マニュアルフォーカスで自在にピントを合わせる事が出来るが、ボクは例えD4とf/1.4レンズを用いた明るいファインダーを以ってしてもマニュアルフォーカスが苦手である。その言い訳としては、ボクは目が悪いのだ。

そんなボクが頼りにしているのは「D4」の「AF-C シングルエリアフォーカス」だ。D4のAFポイントは小さくて厳密で、「狙った瞳の中に写っている自分自身」までピントを合わせる事が可能。その精度たるやボクが肉眼で操作する限界を超越しており、基本的にはD4のAF-Cにピントをゆだねている。
レンズ AiAF Nikkor 85mm f/1.4D IF
露出モード 絞り優先オート
絞り F2.8
露光時間 1/320s
ISO感度 ISO100
露出補正 0
測光モード マルチパターン測光
焦点距離 85mm
AFモード AF-C シングルエリアフォーカス
ピクチャーコントロール ビビッド
三脚 手持ち

機種 D4 「AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G」

「AF-C シングルエリアフォーカス」

瞳の中に写る自分自身まで写っている。

条件が良ければかなりの確率で「当たる」。

これがボクがD4を利用している絶対的な理由の一つ。ただし、難点としてはフォーカスポイントに瞳がある必要があるので、構図の自由が効かない事が挙げられる。
レンズ AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G
露出モード 絞り優先オート
絞り F1.8
露光時間 1/1000s
ISO感度 ISO200
露出補正 0
測光モード マルチパターン測光
焦点距離 35mm
AFモード AF-C シングルエリアフォーカス
ピクチャーコントロール スタンダード
三脚 手持ち


「LVモード コントラストAF」

機種 D4 「AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED」

「LVモード コントラストAF」

同じく頼りにしているのが、LVモードでのコントラストAF。D3の時は使いにくい機能に過ぎなかったが、D4では直感的に扱えるように進化しており、最近はこの機能を日常的に使うようになった。

画面全体にわたってピント位置を変える事が出来るので、構図は自由自在となる。例えば、このようにローアングル構図でファインダーを覗きにくい場合でも、LVモードを使えば自由に、しかも厳密にピントを合わせる事が可能になる。これは使わなきゃ損だとすら思う。

難点はフォーカスが遅い事と、露出が合いにくい事が挙げられる。
レンズ AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED
露出モード 絞り優先オート
絞り F1.8
露光時間 1/200s
ISO感度 ISO100
露出補正 0
測光モード マルチパターン測光
焦点距離 24mm
AFモード LVモード ノーマルエリアAF
ピクチャーコントロール スタンダード
三脚 手持ち

機種 D4 「AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G」

「LVモード コントラストAF」

長女の右目にピントを合わせているが、前髪が邪魔なシチュエーション。この状態のまま拡大してゆき、数回フォーカスし直して「ビシッ!」と来た時にシャッターを切っている。

この究極のボケ味は流石「5814G」と言ったところ。世間一般的なズームレンズでは、こうは写らない。筆は選ばなくても良いけど、レンズは選ぼう。その価値は、ある。
レンズ AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G
露出モード 絞り優先オート
絞り F2.2
露光時間 1/250s
ISO感度 ISO200
露出補正 +0.7
測光モード マルチパターン測光
焦点距離 58mm
AFモード LVモード ノーマルエリアAF
ピクチャーコントロール ビビッド
三脚 手持ち


「LVモード 拡大鏡マニュアルフォーカス」

機種 D4 「AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G」

「LVモード 拡大鏡マニュアルフォーカス」

同じくLVモードを用いた拡大鏡マニュアルフォーカスも多用している。顕微鏡のように瞳を拡大しながらマニュアルでピントを合わせるので、もっとも厳密にピントを合わせられる

この場合、コップの縁が邪魔でAFではピントを合わせにくいシチュエーション。LVモードに切り替え構図を作りフォーカスポイントを「瞳」に移動し、「グリグリグリッ!」と限界まで拡大して、最後はMFで決める。

難点としては、拡大しているので全体の構図が確認できず、被写体が動いたらすぐに瞳が画面から消失してしまう事、そして露出精度が今一歩と言うところだろうか。
レンズ AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G
露出モード 絞り優先オート
絞り F1.4
露光時間 1/80s
ISO感度 ISO200
露出補正 0
測光モード マルチパターン測光
焦点距離 35mm
AFモード LVモード 拡大鏡マニュアルフォーカス
ピクチャーコントロール ビビッド
三脚 手持ち


「マニュアルフォーカス」

機種 D4 「AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G」

「マニュアルフォーカス」

最終手段はやはり、マニュアルフォーカスとなる。

D4の究極の露出精度によって明るく写っているが、実際には超西日逆光条件で撮影しており、顔が真っ暗だった。顔と太陽の輝度差も激しく、AFが抜けまくったので、マニュアルフォーカスで撮影している。
利点は構図の自由さ、プロになれば自由自在にピントを合わせられる事であろう。

難点としては、撮影技量が問われることと、至近距離から動いている被写体の瞳のジャスピンを得るのは実際問題「無理ゲー」な事であろう。
レンズ AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G
露出モード 絞り優先オート
絞り F1.4
露光時間 1/640s
ISO感度 ISO200
露出補正 +0.7
測光モード マルチパターン測光
焦点距離 35mm
AFモード マニュアルフォーカス
ピクチャーコントロール スタンダード
三脚 手持ち


以上のように手を尽くして瞳にピントを合わせる努力をしているのだが、「じゃあ手ブレが無くてピントが合っていればそれで良いのか?」と言われればそうではなく、「一瞬だけ見せたしぐさ・表情をうまくとらえ」、「背景が美しくボケていて」、「背景に余計なものが写っておらず」、「構図がよく」、「露出良し」、「色温度良し」等々の条件を満たした写真でなければならないのだ。

一見簡単だと思われがちな子供のポートレートだが、気まぐれで言う事を聞かず、不規則な動きをするからこそ、「実はめちゃくちゃ難しい」被写体なんだ。


機種 D3 「AiAF Nikkor 85mm f/1.4D IF」

ボクが今まで撮影してきたポートレートの中で、「3本の指に入る」カット。

半押しからシャッターを押し切るその瞬間、一瞬だけこの表情を見せてくれた。毎回こんなショットが撮れたらボクも苦労しないのだが、実際には自分が納得がいくカットなんて年に数枚しか撮れないのだ。

そして、そんなカットは銘玉「AiAF Nikkor 85mm f/1.4D IF」からもたらされる事が多い。2枚目のプールの写真もそうだが、「8514D」はf/1.4Gシリーズの中にあっても、存在感を放つレンズだ。
レンズ AiAF Nikkor 85mm f/1.4D IF
露出モード 絞り優先オート
絞り F3.2
露光時間 1/80s
ISO感度 ISO200
露出補正 +0.3
測光モード マルチパターン測光
焦点距離 85mm
AFモード AF-C シングルエリアフォーカス
ピクチャーコントロール スタンダード
三脚 手持ち

親指AFボタン

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